馬のウェルフェアのために

 国際馬術連盟(FEI)は、国際的な馬スポーツに係わるすべての者が、FEI馬スポーツ憲章を順守し、いかなる場合にも馬のウェルフェアが最優先されることに同意し、これを受け入れることを求めるものである。馬のウェルフェアよりも、競技の勝敗または商業的な側面に重きを置くことがあってはならない。以下の要点は特に順守されなければならない。

  • 1.ウェルフェア概要
    a) 良質な管理
    馬を最上の状態で管理するには厩舎設備および飼料給与が不可欠である。清潔で良質な飼葉、飼料、水が常に与えられなければならない。
    b) トレーニング方法
    馬はその身体能力および当該種目における熟練度に応じたトレーニングを受けるべきである。馬を虐待するような方法または恐怖を与える方法を用いてはならない。
    c) 装蹄および馬装具
    フットケアおよび装蹄は高い水準になければならない。馬装具は痛みやケガのリスクを避けるようにデザインされ、つくられていなければならない。
    d) 輸送
    輸送中は、ケガやその他の健康被害に対して十分な対策がとられていなければならない。車両は安全、良好な換気、高水準の整備、常に清潔な状態で、かつ適格なドライバーが運転しなければならない。馬を正しく扱える者が、常に馬の管理のために準備されていること。
    e) 移動
    すべての輸送は最新のFEIガイドラインに則って綿密に計画され、定期的に飼料および水を給与するための休憩時間をとらなくてはならない。
  • 2.競技参加適性
    a) 競技参加への適性と能力
    競技への参加は、十分な能力を備えた競技参加適性のある馬および選手に制限されなければならない。トレーニングから競技参加までの間には、馬に適当な休養期間を与えなければならず、輸送後にも休養期間を与えるべきである。
    b) 健康状態
    競技参加適性がないと判断された馬は、競技への参加または参加の継続をすることはできない。その馬の参加適性に疑義のある場合には獣医師のアドバイスを求めること。
    c) ドーピングと薬物
    ドーピング行為および薬物の不法使用を行う、または行おうとすることは、ウェルフェアに係わる深刻な問題であり、認められていない。いかなる獣医学的な治療の後も、競技の前に完全に回復するだけの十分な時間が必要である。
    d) 外科的処置
    競技馬のウェルフェアあるいは他馬および/または選手の安全をおびやかすあらゆる外科的処置は認められていない。
    e) 妊娠牝馬/出産直後の牝馬
    妊娠4ヵ月以降または仔馬を伴っている牝馬は競技に参加させてはならない。
    f) 扶助の誤用
    馬に対して自然な扶助あるいは人工的な扶助(鞭や拍車など)を過剰に使うことは認められていない。
  • 3.競技会が馬のウェルフェアを損なってはならない。
    a) 競技場
    馬は適当かつ安全な路面上でトレーニングを行い、競技に参加しなければならない。すべての障害物および競技環境は馬の安全を考慮してデザインしなければならない。
    b) 路面
    馬が歩き、トレーニングあるいは競技を行う競技場の路面はすべて、ケガを引き起こす要因を取り除いてデザイン、維持されなければならない。
    c) 異常な気象条件
    馬のウェルフェアあるいは安全が確保できない気象条件においては、競技を実施してはならない。競技参加後の馬のために、馬体を冷やす環境および装備を整えなければならない。
    d) 競技会場の厩舎
    馬房は安全、衛生的、快適、換気が良く、馬のタイプと性質に適応できるだけの十分な広さがなければならない。洗い場および水が常に供給されていなければならない。
  • 4.馬の人道的な扱い
    a) 獣医学的治療
    競技会においては常に獣医学的な専門知識が提供されるべきである。もし馬が競技中にケガをしたり疲弊した場合、選手は競技を中止し、獣医師がその馬を検査しなければならない。
    b) 委託センター
    必要であれば、さらなる検査および治療のために、馬は救急車に収容され、最短の治療施設に搬送されなければならない。ケガをした馬には輸送前に最大限の手当てを施すこと。
    c) 競技におけるケガ
    競技中に発生したケガについては調査が行われるべきである。競技場路面の状態、競技の頻度、その他の危険要因について、ケガの発生を最小限に食い止めるために、注意深く調査しなければならない。
    d) 安楽死
    もしケガが重篤なものである場合、その馬は可及的速やかに獣医師によって安楽死処置をする必要がある。安楽死は人道的かつ苦痛を最小限にするものでなければならない。
    e) 引退
    競技から引退した馬は、人道的に扱われなければならない。
  • 5.教育

 FEIは馬術スポーツに係わるすべての者が、競技馬のケアおよび管理に関する知識について、可能な限り高いレベルの教育を受けることを推進する。 馬のウェルフェアのための馬スポーツ憲章は、あらゆる意見を受け入れて、適宜改正される。研究による新しい発見は特に注目され、FEIはウェルフェアに関する研究のための投資およびサポートをいっそう促進している。